遺伝子治療の例

遺伝⼦治療の例

患者さんの細胞を取り出し遺伝子を組み込んだ後に、その細胞を投与したり、患者さんの体内の細胞にベクター(遺伝子の運び屋)で直接遺伝子を届けて遺伝子治療が行われます

遺伝⼦治療の例

監修:自治医科大学医学部 生化学講座 病態生化学部門
教授 大森 司 先⽣

遺伝子治療は当初、遺伝性疾患に対する根本治療として試みられました。本来、病的な細胞がもつ遺伝子の傷そのものを治療する「遺伝子の治療」が遺伝子治療なのですが、⼀般には遺伝子に何らかの手を加えて治療を行う「遺伝子による治療」全般を広く遺伝子治療と呼んでいます。現在では、遺伝性疾患に限らず、がんや慢性疾患に対する遺伝子治療も行われています。

遺伝性疾患に対する遺伝⼦治療の例

遺伝子治療にはさまざまな⽅法がありますが、遺伝性疾患に対する遺伝⼦治療の例を見てみましょう。

まず患者さんの骨髄や血液から血液細胞を取り出します。

次に健康なヒトから取り出した治療用の遺伝子を患者さんの細胞の核のDNAにウイルスベクターなどを用いて組み込みます。

治療用の遺伝子を組み込んだ細胞を特殊な技術で増やします。

治療用の遺伝子を組み込んだ細胞を患者さんのからだに戻します。

患者さんのからだに戻す方法は、静脈や局所への直接の注入などの方法で行います。

遺伝性疾患に対する遺伝⼦治療の例
ウイルスベクターを直接体内に投与する方法

このほかに、神経細胞や筋肉細胞など体内から取り出せない細胞に対し、ウイルスベクターを直接体内に投与する方法が用いられることもあります。

治療用遺伝子を搭載したベクター(遺伝子の運び屋)をつくります。

このベクターを直接患者さんに注入します。

ウイルスベクターを直接体内に投与する方法

これにより、患者さんのからだの中で正常な遺伝子が働くようになり、つくられなかったたんぱく質がつくられたり、異常なたんぱく質ではなく正常なたんぱく質がつくられたりするようになり病気に対する治療効果が発揮されます。

これらの患者さんのからだに戻す治療用の遺伝子を組み込んだ細胞や、直接患者さんに注入する治療用遺伝子を搭載したベクターを遺伝子治療薬といいます。

小澤敬也 編:実験医学増刊 38(2):12, 2020
石田 幸弘:図解・最先端医療 がん遺伝子治療のことがわかる本 あさ出版:65, 2018

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2022年5月作成 MED48L008B