遺伝⼦とは?
遺伝⼦とは染⾊体の中にあるDNAのことで、⼈間のからだの設計図となるものです
監修:自治医科大学医学部 生化学講座 病態生化学部門
教授 大森 司 先⽣
ヒトのからだは⼼臓や肝臓、⽪膚などの組織が集まってできています。組織は細胞からできていて、その細胞の中に核があり、核の中には染⾊体があります。この染⾊体の中にあるDNAが遺伝⼦といわれるものです。ヒトのからだはこの遺伝⼦の指令によって形づくられたり保たれたりしています。つまり、遺伝⼦とは、⼈間のからだの設計図のようなものということができます。
からだをつくる多くのものはたんぱく質でできており、たんぱく質は重要な役割を持っています。
DNAはDNAの遺伝情報を写しとったRNAが核の外へ出て、その遺伝情報をもとにいくつものアミノ酸がつながったたんぱく質をつくります。ヒトのからだはたんぱく質になってはじめて機能します。
染⾊体についてもう少し詳しく⾒てみましょう。染⾊体は⽗親から受け取った染⾊体と⺟親から受け取った染⾊体の2本が1組になっており、1つの細胞の中に23組あります。23組のうち22組は常染⾊体と呼ばれるもので、あとの1組は性染⾊体と呼ばれています。常染⾊体にはおおよその大きさの順に1〜22の番号がふられています。性染⾊体にはX染⾊体とY染⾊体があり、男性はX染⾊体とY染⾊体を、⼥性はX染⾊体を2本もっています。
1本の染⾊体の中には約30億個のDNAが含まれているといわれています。DNAはらせんの形をしていて、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)という塩基からできています。
この塩基の組み合わせ(配列)がその⼈のからだの特徴などを決めているのですが、この塩基の配列が本来の配列と違う(たとえばATCGと配列されているはずのものが、AGCTとなっているなど)と、つくられるはずのたんぱく質がつくられなかったり、異常なたんぱく質をつくってしまったりします。これを遺伝⼦の変異といいます。遺伝性疾患とは、このような遺伝⼦の変異によりヒトのからだが病気としての症状を表すものをいい、代表的なものには、脊髄性筋萎縮症(SMA)、⾎友病などがあります(遺伝⼦治療が検討されている疾患参照)。
石田 幸弘:図解・最先端医療 がん遺伝子治療のことがわかる本 あさ出版:6, 2018